町医者 松嶋大ブログ

岩手県盛岡市で「なないろのとびら診療所」を運営する町医者・松嶋大のブログです。

入居者さんを信じ抜こうじゃないか。

「これからは、もっと、入居者さん(患者さん・利用者さん)を信じ抜こう」

 

昨年の5月だったか6月の、全体ミーティングで、僕は、スタッフたちにそう宣言しました。

 

介護事業と保健室事業を基本撤退し、オークスタイルでいくことを決断したときです。

 

僕は、これまで、医療や介護にずっと違和感を覚えていました。

医者のくせに、です。

 

この違和感、なかなか言語化できないものの、とにかく気持ち悪いのです。

 

 

あるとき、オークフィールドで気づきました。

入居者さんが、生き生きと、入居後に元気になっていくさまを。

 

オークが何かをしたわけでもありません。

食事は準備しても、それ以外は特に何も。

ただ、一緒に外出したり、一緒に語り合ったり。

 

入居前、自宅にいらっしゃったときは介護サービスを複数使っていた方も、入居後はあまり使わかないということにも気づきました。

 

なるほど、そうだったんだ、と気づきました。

僕ら、医療人は、医療や介護という大義のもと、ときに自分たちの正義を振りかざし、相手の自由や尊厳を奪っていたのかもしれないと。

 

 

優秀な介護のもと、独居者が、ある意味で贅沢な引きこもりになること。

転んでほしくないと、横にしっかりと寄り添い、リハビリを頑張ったり、ときに車椅子も駆使しつつ、でも、結果、どんどん歩けなくなったり。

 

そういえば、こんなこともありました。

数年前の正月に見送った方。

最晩年は苦しさが強く、僕は患者さんを説得してモルヒネを使いました。

数日後に、確かに苦しみは減ったのですが、ご本人、注射を抜けと訴えるのです。

「でもそれがないと苦しいよ」と再度説得しても、「いいからとれ」とおっしゃるのです。

どれほど苦してくも医療に頼らないという生き様だったのでしょう。

注射を抜いたら、むしろ苦悩がとれたのでしょう。

痛みがあったとしても、とってもすっきりした顔をされていました。

鬼の形相で「注射を抜け」とおっしゃったこと、全く忘れられません。

 

 

僕は何をしていたのだろう。

そのピークに達し、僕は、介護事業と保健室事業をやめ、あの言葉を口にしました。

 

 

入居者さんを信じ抜こうじゃないか。

 

 

もちろん、いくらでも苦悩が少ないほうがいいに決まっています。

でも、それがために、相手の意思を踏みにじってはいけない。

 

転ぶかもしれない。

でも、転んでほしくないと願いつつ、転ばないと信じよう。

 

薬を飲み忘れるかもしれない。

でも、まずは薬をしっかり飲んでくださると信じよう。

 

誤嚥するかもしれない。

でも、誤嚥せずに、美味しく食べてくれることを信じよう。

 

もっともっと。

 

綺麗事かもしれません。

でも、相手も同じ人間。

しかも、たいていは人生の大先輩。

もっとリスペクトし、もっと信じようじゃないか。

 

 

「転んだらどうするんですか?」と訴えるスタッフには、語りかけました。

 

 

じゃあ、転んでもいいから歩きたいという本人の希望をどうするのか?

 

 

僕らは、いつも無責任に、いつも無用な正義感を振りかざし、結果、相手を不幸に落とし込んでいるかもしれない。

そう思うと、僕は苦しくなりました。

 

 

ある方がおっしゃいました。

 

「入院はしない。あんな牢獄のようなところには」

 

でも入院しないと死んじゃいますよ、と言っても、それでいいのだと。

死は敗北、と考える医療人にとっては、どうしても受け入れがたい本人の希望でした。

だからといって、無理やり入院させたとして、踏みにじった本人の尊厳はどうするのだとも悩みました。

 

 

入居者さんを信じ抜こうじゃないか。

 

 

あと一つ、付け加えておこうと思います。

しかし、僕らの物語は決して棄却もしない、と。

 

いくら相手の物語が最重要とはいえ、僕らにもまた物語(想い)がある。

 

例えば、転んでもいいから歩きたいと願う方があれば、転んでほしくないわたしたちの願いもまたある。

だったら、一方的な正義の押しつけはせずに、転倒について、もっと語り合えばいいじゃないかと思うのです。

徹底的に語り合って、それでも歩くというのであれば、それでもいいんじゃないかと。

 

 

でも、その前に、転ばないのだ、と信じ抜くこと。

まず、ここから始めたいのです。

 

 

入居者さんを信じ抜こうじゃないか。

 

 

この考えが、今の僕を支えています。

オークスタイルと呼んでいます。

 

 

オークについて多少付け加えます。

スタッフもまたオークの住人の一人。

だから、入居者さんとスタッフ、住人同士、一緒に暮らしを創っていこう。

 

 

これが、僕が思うオークスタイルです。

 

 

 

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総合診療をベースに、認知症治療と在宅医療、そして終末期医療に取り組んでいる、事象「患者バカ町医者」の松嶋大が、日々の実践をみなさんに共有し、またみなさんからも共有してもらいながら、これからの「医・食・住」を語り合うサロンです。

 

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