町医者 松嶋大ブログ

岩手県盛岡市で「なないろのとびら診療所」を運営する町医者・松嶋大のブログです。

片思いのマブダチ

さすがに堪えた。

 

かかりつけ患者さんが、老衰が進む中、最後の最期でぽっくりと逝った。

遠くないなと想定していたが、やはり突然だった。
とびきり思い入れがある患者さんだったから、余計に堪えた。

 

 

「お医者さんにお任せ」という岩手県人にありがちな気質の人が多い中、彼は常に何かと闘っていた。 

だから、僕とも時折、衝突した。

僕は、基本、大人気ないから、闘いには闘いで挑んだ。

 

 

衝突を繰り返す割りに、ものすごく深いところで、絹糸のごとく、かすかに細く、しかし強く、結びついているような感覚があった。

 

なぜ、僕がそう思っていたか?

きっと、私は彼の前では常に丸裸でいたからかなと。

常に本気、常にまっすぐと。

 

 

初対面と大喧嘩のことは忘れない。

  

初対面。

「何か困っていることはないですか?」と尋ねるも何もお話されず。

質問を変えた。

「では、何か不安なことはないですか?」
すると、最初はボソボソ、だんだん語り始めた。

「なるほど、そこが不安だったんですね。よく、分かりました。初対面で申し訳ありませんが、ぜひ、私に最期まで診させてください」と男同士の握手を交わした。
最初で最後、彼の最高の安堵の表情と、お辞儀だった。

 

都度、「最期まで診るって約束したもんねー」が私の口癖となり、彼もそれを聞くと頷くのみだった。

 

大喧嘩。

確か初対面の次か次の次くらい。 

20代の部下(女子)に、相当強い口調で畳み掛けたから。

僕は、たいていのことは許容するが、仲間に危害や悪影響が及ぶことだけは許さないと決めている。

だから、彼の部下への強い口調は許せなかった。

すかさず反撃、怒りのまま彼の元を去った。

去った後、うちの看護師があえて立ち寄った。

その際、彼が看護師にこぼした言葉をあとで聞いて、こころで泣いた。

内容は内緒。

 

 

僕が出会う前、彼は、大変な患者・利用者と影でレッテルを貼られていたらしい。

理由はなんとなく分かる気もしたが、僕にとってはどうでもいいことだった。

なんてことない、最高の男でしたよ。

年はたくさん離れてたけど、マブダチのような彼。

 

マブダチの最期。

ただ本人は僕のことはマブダチとは思っていないだろうな。

片思いに違いない。

 

臨終の顔、憎たらしいくらいに穏やかだった。

そう、あの初対面の時以来だ。

 

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ゆきのいろで最晩年を過ごされた