「医者なのだから医者だけをやったほうがいい」
幾度となく頂戴した助言であり、時に揶揄なこともある。
尋ねられることも多い。
「なぜ、そんなに事業をやっているんですか?」
なぜって、実にシンプルです。
目の前の患者さんの幸せのため。
これだけ。
町医者がビジネスを展開する理由。
その答えが、上記。
はい、おしまい。
これで終わったら面白くないので、もう少々説明を。
私、とにかく患者バカ。
一切妥協できません。
担当患者さんが困っていたら、とにかくなんとかしたい。
担当患者さんが不幸だったら、とにかく幸せを届けたい。
つまり、最善を尽くすことだけを考えています。
あるとき、「もう逝きたい」を連発する90代の女性がいました。
どうすれば、笑ってもらえるだろうか。
どうすれば、「長生きしてよかったー」と仰ってくれるだろうか。
とにかく悩みました。
結論、女性がワクワクするような通所介護(デイサービス)を作っちゃおうと。
あるとき、便秘がひどい患者さんがいました。
どうやっても良くならない。
悩んでいる最中、コールドプレスジュースが良いという話を耳にしました。
早速機械を購入し、あれよあれよというまにカフェを開設。
ジュース、そしてカフェにはさらに物語があります。
とにかく、最高のジュースを創りたい!
じゃあ、土からだろうと。
そこで農園も運営することに。
要するに、カフェも農園も、この患者さんの便秘をよくするためでした。
こんな感じで、私が展開する全事業の創業に、必ず特定の一人の患者さんがいます。
そうです、一人の患者さんのために一つの事業を展開してきたのです。
話は飛躍します。
宮澤賢治が「農民芸術概論綱要 」の中で語っています。
世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない
偉人を前に、誤解を恐れず申せば、私のやり方は逆。
目の前の人の幸福を追求する先に社会全体の幸せが続く
ぼちぼち結論。
町医者がビジネスを展開する理由。
ビジネスが先にあるのではなくて、常に患者さんが目の前にいます。
その特定の患者さんの幸せを願い、その達成のために一つずつ事業を展開しているうちに、気づいたら7法人(一つの個人事業を含む)まできたということです。
ところで、私が数多く展開する事業所のうち、盛岡市前九年の「ゆきのいろTHEハウス(看護小規模多機能型居宅介護)」は二つの意味で特別。
まず、創業の理由は同じ。
一人の患者さんの幸福のため。
次に、ゆきのいろという名前に込めた想い。
とっても大好きだった患者さん、ユキさんからいただきました。
ユキさんは私のことを本当に応援してくれた方。
私が施設を作ったらいの一番に入るからねと。
しかし、急逝。
そこで、私が作る施設の完成を誰よりも願っていたユキさんを、とにかく憶えておきたいと、ご家族から許可をいただき、「ゆきのいろ」と名付けました。
今回も長くなりました。
私の謎、ご興味がない方がほぼ全員とは思いますが、ここまで読んでくださったことに深く感謝いたします。
すべては目の前の患者さんの幸福のため!